【序章】

西暦2013年2月15日。
現地時間午前9時20分。

モスクワから真東に1500キロ。
ロシア連邦のチャリャビンスク市の上空に光り輝くものが飛来した。

人口およそ100万人。
ロシア屈指の軍事都市でもあるチャリャビンスク市は、すさまじい爆発音に包まれた。

大きな衝撃波が一瞬で街を襲い。
建物のガラス窓が割れ。
人々は吹き飛ばされた。

負傷者は約1500人。
被害を受けた建物はおよそ3300棟。

かの国からの軍事攻撃か?
ついに第三次世界大戦がはじまったのか?

街の人々は、世界の終わりを覚悟した──。

……のだが。

飛来したものの正体は──。

〝隕石〟であった。

大きな隕石が上空30キロメートルで爆発。
燃え上がり、閃光を発しながら、市の上空を通過したのである。

隕石はその後、チェリャビンスク市郊外70キロメートルのチェバルクリ湖に落下した。

この隕石の大気圏突入前の直径は17メートル。
重さはおよそ1万トンと推定される。

それが、秒速18メートルで大気圏に突入。
大半は燃え尽きたが、重さ10トンほどの残骸が落下したのである。

この〝隕石〟は小惑星のひとつであった。

現在、地球衝突軌道をとる危険な小惑星は監視下に置かれている。

その数、1万余り──。

ところが──。

数百メートル規模の小惑星のうち、実に80%以上が現在地と軌道を確定できずにいる。

衝突するかもしれないのに、である。

地球には、いつ小惑星が衝突してもおかしくは、ない。