レーザーマーカーとは
レーザーマーカー(レーザーマーキング)の原理
吸収されたレーザーは熱になり、この熱によってレーザーマーキングが行われます。
レーザーマーキングには主に、材料の表面を
- 変色する方法(by 酸化や炭化)(樹脂材料など)
- 溶融する方法(シリコンウェハなど)
- 除去する方法(金属材料など)
があります。これは下図に示すように、材質や加工点でのレーザーパワー密度により異なります。また複数の加工形態を含みます。
Optipediaより引用
レーザーの加工材質の波長特性
コントラストの高いレーザーマーキングを行うためには、レーザーの波長と加工材質の吸収波長のマッチングが重要になります。
::レーザーマクロ加工の種類と基礎現象
吸収率が高いほどレーザーマーキングがしやすくなるため、レーザーの波長が短いほどレーザーマーキングがしやすいことが分かります。
レーザーマーカー(レーザーマーキング)の方式
レーザーマーカーの方式には、大きく分けてマスク方式とフラットベッド方式とガルバノスキャン方式があります。
::レーザーマーキング:マスク方式とスキャン方式
マスク方式
レーザーマーキングする方式です。レーザーマーキングのパターンを変えるごとにマスクが必要になります。
フラットベッド方式
レーザーマーキングする方式です。駆動部分の動作範囲とレーザーマーキング範囲がほぼ同じであるため、
広範囲にレーザーマーキングすることができます。
ガルバノスキャン方式
fθレンズで集光させ、2枚のミラーをスキャン(走査)することで、レーザーマーキングする方式です。
ガルバノスキャナーは高速動作が可能なため、高速にレーザーマーキングすることができます。
いまは主にガルバノスキャン方式が使われております。
レーザーマーカーの主な項目としては,レーザーの波長 (μm)、平均出力 (W)、繰り返し周波数 (kHz)、パルスエネルギー (mJ)、
加工点におけるビーム強度 (W/cm2)、加工速度 (mm/s)、走査ピッチ (μm)などがあります。
ガルバノスキャナー
ガルバノスキャナーに流す電流を変えることで、ミラーの角度が変わります。ミラーの角度を変えることで、レーザー光の反射方向を変えます。
ミラーを高速に振ることで、レーザー光を走査(スキャン)します。
左右方向用と上下方向用の2つのガルバノスキャナーを使用して、面の走査をおこないます。
fθレンズ
一方、Fシータ(FΘ)レンズは、予め樽型の湾曲収差が得られるように設計されているので、平面にそって結像されます。
ベクタースキャンとラスタースキャン
ベクタースキャン
ベクタースキャンとは、レーザーを図形の形状に沿って振り動かし、図形をレーザーマーキングする方式であります。
素早いレーザーマーキングやサンプルを切断する際に使われます。
イラストレーター、CADソフトなど数値化されたベクターデータが該当します。
メリット:サイズの拡大・縮小が容易で質の劣化を招くことが無く、輪郭がくっきりと表現出来る。
デメリット:数値で表現されるため写真のような細かな描写表現が難しい。
ラスタースキャン
ラスタースキャンとは、レーザーを図形の形状に沿わさず、まずは1次元的に直線に振り動かし、
次いでその垂直方向に連続的にスキャンしていくことで、2次元の面で図形をレーザーマーキングする方式であります。
インクジェットプリンターがインクを塗布するようにレーザーマーキングを行ないます。
写真などをレーザーマーキングする際に使われます。
ビットマック画像(bmp)、写真(jpeg、png)と言ったピクセルドットが構成された画像データが該当します。
メリット:ピクセルドットで構成されるため写真などの複雑な表現が可能。
デメリット:ピクセルドットで構成されるため拡大・縮小をするとエッジがギザギザになる。
レーザーマーカーのビームスポット径の波長特性
fθレンズで集光させたときのレーザーのビームスポット径は下式で表されます。
φ = 4 f λ / π D
ビームスポット径 φは、例えばレンズの焦点距離 fを100 mm、入射径 Dを10 mmとすると、
- CO2レーザー(波長10μm)の場合:127 μm
- ファイバーレーザー(波長1064nm)の場合:13.5 μm
- UVレーザー(波長355nm)の場合:4.5 μm
となります。波長が短くなる程、ビームスポット径が小さくなることが分かります。小さく印字したい場合には、UVレーザーマーカーが適しております。
レーザー(光子)のエネルギーの波長特性
光を粒子としてとらえた場合、光子1個1個のエネルギーは波長によって決まり、
波長が短いほど光子のエネルギーは高くなります。(参照:光電効果)
光子のもつエネルギーは下式で表されます。
E = hν = hc / λ
光子のもつエネルギーEは、波長 λが小さければ小さいほど、大きくなることが分かります。
一般的に、波長が長いレーザー(CO2レーザーやファイバーレーザー)は、照射した素材を加熱し化学結合を切断するため、熱加工になりやすいです。
一方、波長が短いレーザー(UVレーザー)は、光子のエネルギーが大きいため、
素材の化学結合を光で切断する光分解加工(非熱加工)になりやすい傾向があります。
光分解加工(非熱加工)は、熱加工に比べて、加工箇所の仕上がりが滑らかで美しく、残渣も少ないというメリットがあります。
Optipedia 参考リンク